BXのフロント・ブレーキのパッド&ロータ交換


 ある日、工場長妻が運転していたら、回転計の右上にオレンジのランプが点いたと言いました。でも、うちのBXは中古で買ったせいもあり、取扱説明書もないため、そこに警告灯があることさえ知りませんでした。CMLで訊いてみたところ、早速ITONAMIの楢林さんをはじめ何人かから、それはフロントのブレーキ・パッドの摩耗警告であることが判りました(役に立つなあ!CML)。

 どのくらいチビとるか(「摩耗しているか」の岡山弁)診てみたところ、残りわずかではあるものの、警告が出るほどではありませんでした。では警告灯の誤作動かと思ってみた(シトロ乗りの習性?)のですが、実はブレーキ・パッドのセンサに繋がるコードが切れてしまってブラブラしていました。これがバンプ時にサスペンション・アーム等に接触してランプが点灯していたようです(^^;;。
 ブレーキ・ロータも診てみましたが、想像以上に摩耗していてレコード盤状に溝が出来ており、少なくとも研磨したほうがよいことがわかりました。

 ブレーキ・パッドについては、経験上、社外品の効きの良さには摩耗の速さという欠点を上回るものがあるのを知っていますので、探してみました。PBRという、オーストラリア製のものが見つかりました。また、実際に見たわけではないですが、型番から言ってPeugeot205と同じキャリパのはずなので、イタリアのTAR・OXも大丈夫かもしれません。
 ところが、問い合わせたところ、これらのパッドには摩耗センサがついていないことが判ったのです。考えた結果、他の2台とは違い、峠モードで走ることも少ないので、純正品にして、浮いた分でロータも交換することにしました。

 パーツ・リストで見てみると、信じられないことにロータ(ZZW0-33-251)は、ソリッド・ディスクとはいえ、左右セットで定価10,100円の安さ。パッド(ZZV1-33-28Z)は10,500円(いずれも定価)。早速懇意のマツダ部品にTELしました。このような消耗部品は大体ストックがあるようです。


 まず部品の写真をお見せします。

 これがブレーキ・パッドのセット。買ってから気づいたのですが、センサは別部品でした(後述)。箱には日本語でも「ブレーキ パツド、フロント」と書いてありますが、「ツ」が小さい字ではなく、半行下にずらしてあるのがご愛敬。
 黄色いシールにはフランス語で「ブレーキ交換済み。100km走るまでは効きません。長生きするためにはブレーキの効きに注意しましょう」みたいなことが書いてあります。このシールを目に付くところに貼って持ち主に注意を促すのでしょう。
 これがブレーキ・パッド摩耗センサの正体。ゴムの方を上のベース・プレートの穴に差し込んでおくんです。パッドが減ってロータと接触すると導通が生じて警告灯が点灯します。パーツ・リストの絵では一体になっていたのに。これならPBRでも穴さえあったら使えるはずですね。ちゃんと+側は赤、−側は黒の線になってます。
 これが買ってきたミックスピザ、じゃなかったブレーキ・ロータ。ちゃんと防錆加工を施した紙に包んでありました。一枚約3.5kg。

 さあ、作業に取りかかりましょう。用意する工具は次のとおりです。おっと、その前にITONAMIのBX Repair Noteをみて基本を押さえておきましょうね。

まず、ジャッキ・アップしてタイアを外します。私の場合、面倒なので、なじみのピットイン共和に行ってリフトを借りて作業しました。

 右の写真が左Fタイアを外したところ。画面左側が車体前方です。アップライトとブレーキのAssy'が見えますね。ストラットの前側から伸びているのがブレーキ・ホースで、後ろから回り込んでいるのはパーキング・ブレーキのケーブルです。(なぜ前についてるかはここ参照)
 ブレーキ・ロータは矢印のビスで留まっているだけです。Haynesでは、パッドを外した後でこのビスをゆるめるように書いていますが、パーキング・ブレーキでロータの回転を止められるので、このときにゆるめておく方が良いと思います。熱膨張を繰り返しているので非常に固いです。ナメないように注意しましょう。
 ここは、車両によってはポジドライヴという、特殊なネジの場合があります。+のネジを用意して替えてしまうつもりなら、無理矢理+のドライヴァでゆるめてしまう方法もあります。ドライヴァよりネジ4本の方が安いですからね。
 これはキャリパ部のアップ。シングル・ピストンなので、外側のパッドはシリンダの反力で押さえるわけです。
 パッドのバック・プレートの間隔から摩耗具合が判りますね。手前に見えているコードが外側パッドの摩耗センサです。パッドに差し込まれたセンサがディスク・ロータに接触すると、導通が生じて警告ランプが点灯するという仕掛けです。内側パッドは見えにくいですが上側の同じ位置についています。
 センサをコネクタから抜き、パッドにはまっているクリップ(針金にみえるもの)を外します。次に、パッドを固定しているプレート(黒線で囲んだ部分。L字状です)の動きを規制している割ピン(矢印)をプライア等で引き抜きます。そしてプレートを手前に引き抜きます。なかなか動いてくれませんから、開いている穴に何か差し込んでこじりました。
 プレートが抜けたら、パッドを引き抜きます。ITONAMIでは抜けにくいと書いてありますが、うちのクルマはパッドを軽く叩いてから引っ張ると、左右ともそんなに困りはせずに抜けました。
 パッドを抜いたらロータを外します。ハブとくっついているので、プラスティック・ハンマでちょっと叩いてみました。外れたところが右の写真。
 取れたら、パッド屑をブレーキ・クリーナで洗い落とします。ケチケチせずに勢いで流すくらいでやるのがコツだそうです。キャリパにはBendixの刻印がありました。
 パッドを抜いた状態でのピストンの状態。当たり前のことですが、パッドが減って薄くなるとともにピストンが長くなってきます。
 ピストンを廻すための切り欠きが見えます。これを廻すには四角い軸のドライヴァがあれば便利です。丸棒では滑りやすいのでアタマに来ます。
 まあ、この仕掛けのおかげで特殊工具なしにピストンが戻せるので便利と言えば便利ですね。
うんと廻して、戻したらこうなります(なぜかここから右側の写真)。切り欠きは、余分に1本溝があるところにプレートの突起を合わせるようにします。外側には突起のない方を使います。
 BXのパッドは今まで見たものより厚く、摩擦材だけで12mmもあります。これに加えて、プレート、ロータの厚さを考えて適正な量を戻すようにしましょう。Pブレーキの調整のため、1mmのクリアランスを確保しておくようにするそうです。
 あとは外した順に組み付けます。パッドを付ける際には、あらかじめセンサとクリップを付けてから組み付ける方が楽です。
 これが完成図。分解前に比べるとずいぶんキレイでしょ?新しいパッドは、ノン・アスベストのセミ・メタル・パッドですから、環境にも優しいはずですね。摩耗センサのコードはクリップの中を通してやります。先程述べたクリアランスを確認したら、エンジンをかけてブレーキを踏み、圧をかけてやります。
 うちのBXは、摩耗センサのコネクタから車体に至るまでの配線(細い上に長さにも余裕がなく、据え切りではぎりぎりの感じ)が左右とも切れていたので、繋ぎ直しておきました。しかし、次にセンサが働く筈の10万kmまでもつかいな?(結局保たなかったのですが→後述
 パーキング・ブレーキは自動調整できますが、12〜15ノッチが適正範囲。確認できたらタイアを組み付けて完了です。可能ならパッドに焼きを入れます。それでも、例の黄色いシールが言うように、最初の100kmは車間距離も多めにとって、用心しておいた方がいいでしょう。

まあ、作業時間はゆっくりやって1時間半という程度でしょうか。交換後は効きも良くなったような気がします。 第一、ブレーキ関係は保険だと思えば安いものですよ。


補遺

 前回の交換(1997年7月)から1年半を過ぎた1998年12月末、左前外側のパッドが異常摩耗しているのが発見されました。残はほとんどなく、まもなくベース・プレートが接触して「電車ブレーキ」になる寸前。左前内側は4.5mm、右前は両方とも5mmを残していたので、寿命(推定約4万km)の半分程度しか使っていません(もったいない!)。結局、前回繋いだセンサの配線は、両方とも見事に切れてしまっていて、役に立ちませんでした(^^;
 結局、ピストンの戻りか、キャリパのスライド・ピンの動きが悪いか、どちらかと思われます。これについては後日主治医にO/Hをお願いすることにして、とりあえずパッドだけ交換しました。今回も純正品にしましたが、その理由は単にカネがなかったためです(^^;
 作業内容はもちろん一緒ですが、今回はL形プレートもすっと抜け、ピストンも前回よりは軽く廻りました。やはり、交換時期が短いと楽なのでしょう。


なぜシトロエンは前にパーキング・ブレーキがあるの?

 シトロエンは全般的にリア・サスがフル・トレーリング・アームなので、進行方向に真横に向いた軸からサスペンション・アームが伸びています。車高とともにホイールベースが変化します。通常車高では軸から斜め下方に位置しています。
 一方、ハイドロニューマティック・サスペンションを装備するクルマでは、エンジンを切るとハイ・プレッシャ・ポンプからの油圧の供給が断たれますので、あとはメイン・アキュームレータに貯めてある圧力だけで車高を保持します。ところが、やはりこの圧力は時間とともに低下し、車高も下がってきます(最近のものは車高低下遅延装置が付いて、一週間くらいはへっちゃらだそうですが)。
 すると、先に述べたようなサス構造ですから、後輪が後方に動いてくるのです。ここで仮に後輪にパーキング・ブレーキが付いているとすれば、落ちてくる車体の重みがサスのベアリング(そうでなくても壊れやすいようですが)に負担をかけてしまいます。このため、複雑な構造になるのをおして、前輪にパーキング・ブレーキが付いているのです。
 ということですから、ハイドロ・シトロエンでは、バックで車止めに当たったところで停車するという技は厳禁です。ご注意ください。なお、普通のクルマでも、設計上前方からの入力には強くしてありますが、後方からの入力については意外に弱いらしく、アライメントはすぐ狂ってしまうそうです。バックするときでも車止めに当たる瞬間はデリケートに操作しましょう。


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