これはもう1年半も前の出来事なのですが、暗い思い出(苦笑)でもあり、また嫁さんがMPVを買ったりしたため、まとめるのが遅くなりました。既に記憶が若干あやふやになった点もあるのですが、いわゆる「BX車内温泉湧出事件」についてその顛末をご説明しようと思います。
ある寒い朝、その頃は娘がまだ小学校に上がっていなかったこともあり、保育園の送迎役の嫁さんの方が早く出勤していたのですが、僕が出勤しようとしていた瞬間、電話が鳴りました。だいたい、こんな時間に電話がかかって来るというと、ロクな要件はないのですが不吉な予感はまさに的中しました。BXが壊れたというのです。
家を出発しておよそ2kmほど行った地点で川の土手沿いを走る箇所があるのですが、そこでデフロスタの辺りからボワッと白い煙(これは後に湯気であったことが判明するのですが)が発生し、車内が白くなってしまったというのです。
で、今はどうしてるのかと訊いたところ、「急ぐのでそのまま1km先の保育園まで着いてそこから電話した。それ以上何も判らない、ランプはどれも点いてない」と言います。状況も判らんのにそのまま走ってしまうなとはなんて無謀なんだと叱りつけたくなったのですが、BXには「乗っていただいて」いる状態でしたので状況は職場には急用で(笑)休むことを伝え、工具箱を積んだロードスターで駆けつけました。とりあえず妻にはロードスターで出勤してもらい、様子を見てみることにしました。
車内を観察してみると、何だか臭いにおいがしていましたが、焦げたり焼けたりしているようではないようです。従ってこれは煙と言うより湯気ではないかと思ってフロア・マットの裏を見てみると、助手席(右側)の床に大きな水溜まりが発見されました。その水もまさしく青色であった(LHMと区別が付くように青いクーラントを入れていたのです)ので、冷却水が漏れていることが判明しました。
熱いのでおそるおそるラジエータ・キャップを開けてみましたが、漏れていることからも判るとおり、圧は全然かかっていません。中を覗いてみたところ、水面は到底確認できないほど減っていました(元々BXの冷却水量は見にくいのですが)。エンジンをかけて回してみましたが、にわかにどこから漏れているかは確認できませんでした。
大穴が開いているのであればダダ漏れになってしまうはずなので、そう大きな穴ではないことが推察されましたが、保育園の駐車場でいろいろ分解するわけにも行かないので、とりあえず冷却水を補充しつつ家まで帰ることにしました。保育園で巨大なジョウロに水を満たしてもらい、冷却水のランプが点いたところで補充する作戦です。結局、ゆっくりゆっくりと2km余を帰る間に2回ランプが点灯、その場で補給するという荒技を駆使してなんとかたどり着くことができました。我が家は山の上にあり、最後にちょっと急な坂を数百m登るのですが、実を言うとその坂の途中で3回目が点灯しかかり、あわてて3000回転まで上がっていた回転数を落とし、最後は這うようにしてたどり着いたのでした(^^;
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室内側に冷却水が漏れているということは、ヒータ関係の部分が発症箇所ということになりますので、入り口から探ることにしました。BXの場合、右側の席の足下から画面外左側にあるエアコン・ユニットへとつながっています。グラヴ・ボックスを取り外して(内部のビスを外すと引き出せます)、下を覗いて見ると、左の写真のようになっていました。 上の金具がコントロール・ロッドで、ビスが見える辺りがヒータ・ブロック。上側のパイプから熱い冷却水が流れ込んできて、下から戻ってゆきます。ブロックの中には2つの穴が開いた平らなプレートが入っていて、これが上下に動いて冷却水の流量をコントロールするわけです。 この周辺は濡れていましたが、湿っている程度で今ひとつ原因の特定はできかねる状態でした。 |
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エアコン・ユニット内の放熱器からユニット内に漏っている可能性がありましたので、放熱器を外すことにします。ところがここは足に当たらないようにか、ユニットに密着するように配置されており、まっすぐレンチが入る余地がありません。結局写真のようにフレキシブル・シャフトを購入して回すことにしました。上下左右で計4個の小さい六角ボルトで固定されています。 そういえば書き忘れましたが、もちろん事前に残った冷却水を全部抜いておかなければなりません。その方法はこちらにまとめてありますので参考にしてください。 |
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放熱器の部分はこのようにエアコン・ユニットに横から差し込まれている格好になっています。上述の固定ボルトを抜けば取り出せるのかと思ったら、これがボルトを抜いても簡単には抜け出てきません。なぜかと思ってよくみると、ヒータ・ブロックとの接合面が真横ではなく、ちょっと内側に傾いているため、かすかながら引っかかっていることが判明しました。 本来であればダッシュボード及びエアコン・ユニットを分解して取り出すところですが、頭に来ていたこともあり(苦笑)、無理矢理エアコン・ユニットを手前に引っ張っりながら放熱器を抜くことに成功しました(この方法は決してお勧めできるものではありません。万一壊してしまうとその代償は非常に大きなものになるため、参考にはしないでください・・・爆)。 しかしこんなもん、切り口を水平にしておけばどんなに楽になるか判らんのに、何でこんな設計にしてるんでしょうか?そのうえ、、苦労して抜いたにもかかわらず、放熱器からは全く水が漏る気配がしませんでした。うーむ、いったいどこなんだろう? |
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ここに至ってやはりヒータ・ブロックのどこかから漏っていると判断し、それを取り出すことにしました。まずブロックにつながっているロッドを外す必要があります。 これがコントロール部の拡大図です。左上の写真で下側から円弧を描いてブロックに伸びているワイアが見えますが、これが、ヒータ・ダイアルにつながっています。これが写真のプレートをシャフトを軸に前後方向に廻してブロック内のヴァルヴ及びエアコン・ユニット内のフラップの向きを変えているわけです。右側に逆L字状に見えているのがヴァルヴに繋がっているロッドです。 プレートから伸びている、エアコン・フラップのコントロール・ロッドはそれぞれ片側がビスで固定されていますので、それをゆるめて外します。この時に位置関係をよく覚えていないと、再組み付け時に迷うことになりますので注意しましょう。 |
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次に、エンジン・ルーム側で冷却水のパイプを抜く必要があります。パイプは矢印の位置でエンジン側に出てきています。 なお、この写真と次の2枚のみ画調が違います。というのもこれは去年買った200万画素のIXYで撮影したもので、他のは前使ってた35万画素のPanasonicで撮ったものだからです。同じようにリタッチしてサイズ変更してるのですが、比べてみると結構差があるものですね。 |
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これがバルク・ヘッド部の拡大図です。 矢印で示した2ヶ所のクランプを緩めてホースを抜きます。ホースが劣化しているようならこの際ついでに交換した方がよいでしょう。なお、上側のホースの上に見えるのがグロメットの「ベロ」。再取り付けの際にはここを思いっきり引っ張る必要があります。ちゃんと元通りにしていないと雨天時にタイアが跳ねた水が侵入してしまうおそれがあります。 |
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ホースを抜いたら室内側に戻ってグロメットごと引っ張るとブロックが抜けます。するとご覧のとおり、上側のパイプがパックリと折れてしまったではありませんか!(プレートが反射してしまってますがご勘弁)。抜くときに力が加わって破断してしまったようですが、ここにクラックができていたのが水漏れの原因であると確認できました。 しかし、このようにIN側とOUT側で温度差が大きいところ、さらにエンジンブロックが前後に動きやすい(=ホースが押されやすい)FWD車のヒータ・ブロック取り付け部に樹脂製部品を使うなんて、フランス人の考えることはよくわかりません。 |
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これがうちにある他の車でヒータからバルクヘッドに抜けるホースの部分です。左上がMPV、上がRoadster、左がRX-7です。縦置きだったり、ロータリーだったり、10年前や20年前の車だったりしますが、いずれもエンジンの揺動には影響されにくいようになっていたり、車体側取り付け部が金属製のパイプになっていたりします。 ところで、いつもながら再組み付けは分解と逆の手順で行ってください。ちょっとコツを要するのはバルクヘッド部のグロメットへのブロック挿入とグロメットのバルクヘッド穴への挿入です。いずれもちょっと角度を工夫すればすんなり入りますので参考にしてください。 |
このような具合で「車内温泉湧出事件」は解決しました。しかしながら、以前からくすぶっていた、妻のBXへの信頼度はかつて無いほど下降し、ついにはMPVの購入へと至るのでありました。