6万km、そして7年目の車検を迎えようとする矢先、フロントのサスペンション・スフェアがお亡くなりになりました。スフェアってなんじゃ?という方は、こちらで、ハイドロニューマティック・サスペンションのお勉強をしてから読んでください。
前回は知らない間にだんだんとガスが減っていって、なかなか気づかなかったのですが、今回は約1週間であっという間に無くなってしまいました。フェンダを押しても全然沈みません。こうなると、交換するしかありません。前回はTRI用純正部品をディーラでつけてもらったのですが、そのアホらしいくらいの簡単さに、今回は自分ですることにしました。成田さんのLa Liberte!にもスフェア交換等について書いてありますので、見てくださいね。ここでは、ド素人向けにご紹介します。
TRIのフロント用純正部品は容積400cc、圧力55bar(許容範囲+5,-10)、定価7800円です。圧力についてはスフェアの頭付近に刻印があります。
ディーラでは専用工具を使っていますが、スフェアの直径が12cmくらいあるので、はまる奴であれば、オイル・フィルタ用で充分です。チェーン式、ベルト式を使う人もいます。
用意するものはたったこれだけです。では作業を始めましょう。
油圧回路には、エンジン回転時で140〜170kg/cm^2の高圧がかかります。エンジンを切ったあとも、メイン・アキュームレータが油圧を保持しています。この状態でスフェアを外すと、LHMが噴出し、そこらじゅうがオイルまみれになるだけでなく、スフェアが吹き飛んで手榴弾になり危険です。従って外す前に、必ず油圧を抜いておかなければなりません。
その方法ですが、まず車高調整レヴァをLOWポジションにして最低まで下げます。プシューという音がしてリザーヴァに戻っていきます。しかし、これだけでは全部抜けていません。次に、ラジエータ裏側のプレッシャ・レギュレータ(メイン・アキュームレータがついているところ)の右上にあるボルトを2回転ほど弛めると圧が完全に抜けます。ただし、ここはエアコンのホースがあったりして簡単には手が入りません。私の場合、面倒なので車高を最低にしたまま一晩放っておきました。これでも全く問題はありませんでした。
次に、スフェアにレンチをかけて廻します。高圧がかかっている履歴がありますので、かなり固いです。逆ネジかと思う人もいるくらいですが、普通と一緒で左回りが外れる方向です。現にうちのBXについていたスフェアは手ではめたにもかかわらず、エーモンのレンチの柄が短かったため(専用工具は50cmくらいある)、有効にトルクがかけにくく非常に往生しました。最悪、鉄パイプをエクステンションにしてむりやり外そうかとも思いましたが、最後の一押しで何とか外れてくれました。
なお、外れるときにはどうしても若干LHMがこぼれてきます。外れてしまうちょっと前にビニール袋をかぶせておけば、エンジン・ルームを汚さずに済みます。
右の写真はスフェアを外したあとのブラケットの様子。赤い矢印で示しているのはシールになっている、ゴム製の'O'リングです。これをちゃんと外しておきましょう。ネジの部分を痛めないように、手で外す方がいいですよ。
今度は新品をつける番です。スフェアのネジ部と'O'リングにLHMを塗っておきます。最初に'O'リングをブラケットの溝にはめます。あとはオイル・フィルタの要領で、ネジをこわさないように慎重に装着します。締め付けトルクは手で廻らないようになるまで(もちろん、LHMはちゃんと拭いてからやりましょう)で大丈夫です。これをわざわざレンチで増し締めしてしまうと、次に外すときにはとんでもなく固着してしまうようです。
これで作業は終了です。簡単でしょ?今回やってないのですが、後輪側は車高が最低状態では作業がしにくいのでジャッキ・アップが必要です。また、油圧が抜けてからも、サス・アームを一番上に持ち上げておくのがLHMをこぼさないようにする秘訣のようです。
さて、肝心のスペシャル・コンフォート球の具合ですが、文句なく乗り心地は良くなりました。今までは運転中に不整路面を見ると無意識のうちに身構えていたものですが、ほとんど気にならなくなりました。ハイドロニューマティックの長所が存分に引き出せていると思います。
あと、変化としてはステアリングの切り始めの一瞬の初期ロールが早くなった気がするのと、乗り心地が全体に良くなった分、相対的にハーシュネスを意識するようになったことが挙げられます。
まあ、耐久性については使ってみなければ判りませんが、より柔らかいBXを求める向きにはうってつけの部品ではないかというのが私の結論です。