ハイドロニューマティック

Hydropneumatique


 BXのサスペンションは金属のバネではなく、ハイドロニューマティック(Hydropneumatique。以下、「ハイドロ」といいます)となっています。よく、「空気と水に乗った」船にたとえられますが、むしろ私は軽飛行機はこんな乗り心地ではないのかな(乗ったことはないけど)と思います。50km/hくらいから独特の浮遊感覚があるんですよね。

 乗り心地のいいクルマではよくセルシオが挙げられます。セルシオにも乗ってみました。確かにすばらしい乗り心地です。車体剛性が高く、がっしり感が強いクルマです。ところが、シートが比較的堅いせいもあり、意外にもシートの上で結構揺すられちゃうんです。

 ところがBXではシートは柔らかく、体をアメーバのように包み込むので、伝わるショックは凄く小さいんです(16Vとかは違うらしいですが)。もっとも、設計年次が古いためもあり車体剛性はそんなには高くないので、耳から伝わる振動音はあります。
 それに、セルシオくらい大きいクルマなら、元々重いため相対的にバネ下重量は軽いはずなので、ある程度乗り心地は良くて当たり前のような気もしますが、1t程度の5ナンバー・サイズでこの乗り心地を実現しているところが凄いと思います。

 ハイドロの仕組みは巷間言われるほど難しいものではありません。簡単に言ってしまえば空気バネと、油圧で伸縮するストラットでできています。サスペンションのジオメトリは特殊なものではなく、BXでは前がマクファーソン・ストラット、後ろがトレーリング・アームとなっています。やろうと思えばどんな形式でも、ハイドロ仕様にすることはできるんです。


油圧発生装置

 ハイドロニューマティックは、いろいろな箇所を油圧で制御するところに特徴があります。では、まずその油圧の発生装置についてご説明します。

 まず、エンジンルームにオイル溜め(リザーヴァ)を設けます。4.2Lの容量があり、フィルタも設置されています。ここにはLHMというオイル(次項参照)を貯めておきます。

 リザーヴァから吸い出したLHMを、ポンプ(High Pressure Pump)で加圧します。ポンプはクランクシャフトからVベルトを介し1/2に減速されて回転します。ポンプは斜板式で5気筒となっています。1回転で4ccを吐出します。ポンプで加圧したLHMは、メイン・アキュームレータ(Main Accumulator)という装置に送ります。

 アキュームレータは蓄圧器と訳されますが、スフィア(後述します)に似た構造です。鉄球の中に風船のような空気バネが入っていて圧力を貯めるようになっています。風船は肉厚のゴムでできていてフリーな状態で62barという高圧の風船です。アキュームレータ内にLHMを押し込んで行き、中の風船を押し縮めて圧力を貯めます。
 最大170kg/cm2、最小でも140kg/cm2もの圧力を貯めるようになっています。貯めておくことによりポンプの脈動排除と負荷軽減を図り、また一時にまとまった量の高圧LHMを各部に供給できるわけです。また、万一ポンプが動作不良に陥っても、一定の間は高圧を送ることができます。

 なお、油圧回路には保安上回路別の優先度を設定するPriority Valveというものが設けられており、設定された圧力が保持できなくなった場合にはサスペンション→ステアリング→ブレーキの順に供給を絶っていき、ブレーキの作動が最後まで確保できるようになっています。


LHM (Liquide Hydraulique Mineral)

 次に、どんなオイルを使って作動しているのか説明しましょう。そのオイルは題名のとおりLHMと呼ばれています。まあ単語の意味のとおりで鉱物性の油圧系作動油というような意味です。

 右の写真はLHMの1リッター入りボトルです。LHMに求められている性能は、長期間にわたり変質しにくいこと、圧力を伝えるものであるため、気泡を生じないこと等が挙げられます。大体、ブレーキ・フルードと同じですね。
 実際、LHMはブレーキにも使われており、2CV等の非ハイドロ車においても、ブレーキ・フルードとして使われている例があります。

 昔の15-SixHや、初期DS/IDには、CH-12とかLHS(これは赤色らしいです)という植物性の油が使われていました。これらはやはり耐久性に難があったのか、1966年から鉱物製のLHMとなっています。色は、透明な緑(うぐいす)色です。まあ、これがCITROENの「血液」というわけですね。なお、いまどき、そんな車に乗ってる人にこんなことを言うのも釈迦の説法ですが、LHS車にLHMを入れたりしてはいけません。その逆もそうです。もし間違うと「血管が詰まって」再起不能ということもあるので要注意です。

 もし、出先で補充の必要があればエンジン・オイルを薄めて使えるようですが、後が心配なので、面倒でも予備のボトルを携行するのが賢明でしょう。


空気バネ

 ハイドロ最大の特徴はこの空気バネです。気体のバネは、固体バネと違い、荷重が大きくなるほどバネ定数が急激に高まる性質を持っています。これを逆に取ると、固体バネでは到底不可能なほど柔らかいバネを付けることができるんです。だから、一見くたくたに柔らかいバネでも、いざというときにはちゃんと効くわけです。これがハイドロ車特有の乗り心地をもたらしているわけです。
 今でこそ高級車を中心に空気バネの車は少なくありませんが、何十年も前からこのようなシステムを実現したCITROENの技術者は大したもんですね。

このバネは、直径約12cm、重量約1.5kgのスフィア(Sphere)と言われる鉄球(写真の緑色の部分)の中に高圧の窒素ガスを入れた肉厚のゴム風船のようなものを封じ込めてある構造になっています。見た目はちょっと大きな手榴弾みたいですね。

 スフィアにはヘソがあります。出ベソです。この出ている部分にネジが切ってあって、前輪で言えばストラット頂部に固定します(BXでは、前方に倒されています)。装着すると、スフィア内部にLHMが流れ込みますが、「風船」の膜があるため、混ざることはありません。その流入口のひとつが右の写真の真ん中の穴です。英語ではオリフィスといい、ダンピング効果の一部を担っています。LHMには高い耐せん断性能も求められることが判りますね。ここまでご覧になるとおわかりのことと思いますが、スフィアはバネとダンパ・ヴァルヴの両方の機能を持っています。

 オリフィス周囲のパッキンに囲まれた部分は円盤状のプレートを重ねてはめてあります。センターで固定されていて周囲はフリーになっています。この裏にはやはりオイル通路があるので、バウンド/リバウンド時にこのプレートは圧力を受けてたわみ、通路を開きます。プレートの枚数と厚さとでバネ定数が変わるので、それを基にセッティングが決まります。BILSTEINのダンパと同様のヴァルヴ構造ですね。ただし、ご覧のようにかしめて装着されているのでBILSTEINみたいにオーヴァーホールすることはできず。セッティングを変えるには玉ごと換えるしかありません。セッティングについては、ガス容量及び圧力が大きくなるほどバネが柔らかくなり、オリフィス径が大きくなるほどダンピングが柔らかくなります。

TRi, TZi, GTi TRi Break TRS
装着位置 F R F R F R
ガス容量 (cc) 400 500 500 400
圧力 (bar,+5〜-10を許容) 55 40 55 40 55 40
中心オリフィス径 (mm) 1.65 1.1 1.65 1.1 1.8 1.1

 スフィアの種類については、BXの純正品に限ってみても数種類あり、16Vに使われていると思われるものを含め計12種類のスフィアがあるようです。その中で詳細が判っているものを右の表に挙げておきます。
 この中ではTRSのフロント用が一番柔らかいようですが、マツダではTRi以降のモデルしか扱ってませんでしたから、通販するかシトロエン・ジャポン系の販売店に行かなければ入手できません。
 なお、マツダのトレーニング・マニュアルでは左表のようにTRiとGTiのスフィアは共通と書いてあるのですが、パーツ・リストを見ると違う部品番号が与えられています。どなたか御存知であればこの謎を解いてください。

 また、純正品とは別に英田舎ではスペシャル・コンフォート・スフィアというものを扱っておられます。このスフィアは純正品を作っている部品メーカーが造っているという話ですがスペック等は不詳で、謎の商品となっています。しかし、実際これを装着したところ、若干ロールが増える気はしますが、非常に当たりの柔らかい乗り心地が実現できましたので、柔らかい乗り心地を望む向きにはお勧めの商品です。


車高調整装置

 車はバネで吊っているわけですから、乗員数や積載物が多くなるほど車体が沈みますね。ハイドロのバネはすごく柔らかいものですから、少々の荷重変化でも車体が大幅に沈んでしまいますが、そうなると設計どおりの性能が確保できません。そこで、CITROENの技術者たちは車高をいつも一定に保つ仕掛けを考え出しました。油で車を支える仕組みです。  

 前述のアキュームレータから供給するLHMを、サスペンションと車体の間に位置するストラット内のシリンダに入れていきます。油が入っていくのに伴い、ストラットが伸びて行き、車を浮かせます。規定の車高になったら圧送を止め、回路を閉鎖します。すると、シリンダ内に閉じこめられたオイルは液体なので収縮しませんから、シリンダ内で「仮想上の棒」となって車体を支えるわけです。この、「棒」の長さ(=シリンダ内に入れる油量)を変えることにより、車高を調整できるのです。

 それでは、どのようにして車高を決めるのでしょうか。

 車高は、スタビライザの回転量から感知します。車高が変わると、スタビライザが軸方向に回転するからです。車体のロールの影響を排除するため、センシング位置も、スタビライザの中央の部分になっています(ロール時にスタビライザは捻れるだけで、中央部は回転しないためです)。こうやって車高を感知し、ロッドを介してハイト・コレクタ(Height Corrector、右写真)という部品に伝えます。これは一種のヴァルヴ装置で車高が規定より低いときには、ハイト・コレクタはメイン・アキュームレータからサスペンションへのラインを開き、シリンダにLHMを供給していきます。サスペンション内のLHM量が増加するにつれて、車高が上がっていきます。規定値になったら、ラインを閉じます。逆に規定値より高いときは、サスペンションからオイル溜めへと抜いた余分なオイルを返し、車高を下げます。

 こうやって、自動的に一定の車高を保つわけです。ただ、細かい変位に対して、いちいち車高調整を行っていたのでは煩わしいので、2〜3秒間は反応しないように、オリフィスやダッシュ・ポットを設けてオイルの流量を調節したりしています。しかし、全ての制御が機械的に行われているところには本当に感心させられます。なお、ハイト・コレクタは前後それぞれに設けられており、お互い独立して動作しています。

 ハイト・コレクタには室内からのコントロール・ロッドも繋がっていて、コンソール・ボックスに設けられたレヴァを操作することにより、任意の高さに車高を調整することができます。
 BXでは、通常時の他、悪路走行時用のHigh、油圧を全部抜くLow、最大車高のMaxの計4段階があります。Highでは通常時から5cmくらい上がります。Lowでは本当にベタベタまで下がり、Maxだと四駆かと思うほど上がります。結局MaxとLowでは20cmくらいもの車高差ができます。
 Lowでは完全に車高が落ちてしまって直接バンプ・ラバーに乗った状態ですし、Maxではツンツンに上がりきってしまっているので、いずれの状態でもバネが全く効きません。これらの状態で走行すると車体を傷めることになるので走ってはいけません。
 なお、Maxまで上げてからジャッキをはめてLowまで下げると、はめた側のタイアが浮くことになるので、グルグルとジャッキを廻して車を上げる必要がなく、タイア交換は非常に楽です。
 また、ある時によく見えない道で、すれ違いのためバックしていたら不覚にも左後輪を溝に脱輪させてしまったことがあったのですが、通常だとジャッキもかけられず往生するところだったのが、車高をMaxにするだけで難なく脱出することができました。ハイドロのありがたみを感じた瞬間でした。
 おまけとして、信号待ちなどの停車時に車高を上げ下げすると、注目を集めること必至です。(ただし、Low Rider系のクルマの近くでやると、パフォーマンスの派手さで見劣りするので注意!)


その他への油圧の利用

 せっかく貴重なパワーを消費して高い油圧を生み出すからには、これを有効に利用しない手はありません。油圧を利用するさまざまな仕掛けに応用されています。

パワー・ステアリング
 他のクルマでは、専用のポンプを設けていますが、ハイドロ車は油圧をステアリング・シリンダに導いてパワー・アシストに用いています。
 また、BXにはついていませんが、後期のDS、SM、CX及びXMのLHDモデルでは、セルフ・センタリング機構がついています。これは、ハート形のカムを用いて直進状態を保持するという仕掛けで、ステアリングを切ったまま停めておいて、エンジンをかけるとスルスルと直進に戻ります。運転したことはないのですが、さぞ直進性はいいのでしょう。
パワー・ブレーキ
 インテーク・マニフォールドの負圧を利用したヴァキューム・ブースタによって、ペダルにかけた踏力を倍加しているクルマが多いのですが、ハイドロ車は発生した油圧でブレーキ・ピストンを押します。
 従って、ブレーキ・ペダルは油圧の発生源ではなく、回路の開閉を制御するスイッチなのです。さすがにGSやCX以降のモデルではペダルの形をしていますが、それ以前のDS/IDやSMでは、ゴムのボタンのような形でした。
 また、後二輪はメイン・アキュームレータからではなく、後サスペンション回路に封じ込められたLHMの圧力をブレーキ回路に開放することによって制動力を得ます。ということは、強いブレーキでボディが浮いて後輪荷重が抜けると、ブレーキの圧力が下がってロックを防ぐ仕掛けになっています。DS/ID等では後輪サスの油圧がブレーキ・「ボタン」裏に設置されたスライド式のバランサ(レース・カーのブレーキ・システムと同じようなもの)を制御し、車重に応じて積極的に前後の制動力配分をコントロールするという、凝ったものでした。
 こう書くと鋭い方は気づかれたと思いますが、ハイドロ車のブレーキ配管は通常見られるようなX配管ではありません。X配管だと、右前と左後ろ、左前と右後ろが結ばれていますから、片方がいかれたときでも前後左右のいずれか片方ずつが効くようになっていますが、シトロエンでは前と後で別れてしまっています。後はまだしも、前二輪が効かなくなったら、ちょっとコワイですね(^^;
セミ・オートマティック・トランスミッション
 DSでは、クラッチ及びシフト操作を油圧で制御して半自動化していました。ステアリング・ホイールの向こう側に立てられたタクトのようなレヴァで操作するのですが、なんとこれはスタータ・スウィッチも兼ねていたのです。
ヘッド・ライトのレヴェリング
 SMでは、サスペンションの油圧をヘッド・ライト・ケースに導いて、ライトのレヴェリングをさせていました。ボディの変位に関わらず、常に一定の高さを保持して照らすというものです。
 さらに、SMやDSでは、高圧回路とは別系統ではありましたが、ステアリング・シャフトから伸ばされた油圧でドライヴィング・ライトを左右に動かし、常に進行方向を照射するということまでしていました。         

ハイドロの弱点

ハイドロニューマティックのサスペンションには弱点もあります。弱点がなければもっと普及するんでしょうけど(笑)。

 第一に、ガスの漏れを完全には防げないことが挙げられます。使用とともに窒素ガスがわずかずつ漏れていってしまいます。CITROENはFWDなので、荷重の重い前輪側から寿命を迎えます。ガスが抜けると、乗り心地が固くなってしまいます(別項参照)。金属バネでは起こらない事象ですね。
 ただ、圧が抜けたスフィアを更新すると、ダンパまで換えた効果を発生させることにもなり、これはこれでオイシイです。

 第二は、柔らかいバネは路面の不正をよく吸収するのですが、逆に車体の姿勢変化に対しての抵抗力は低いので、ロール、ノーズ・ダイヴ、テール・スクウォット等を招いてしまいやすいことになります。これではやはりマズイので、左右方向には比較的太めのスタビライザを設け、前後方向にはサスペンションのアンチ・ダイヴ・ジオメトリを設定することによってその低減を図っています。しかし、特に後者は低速域でのハーシュネス(突き上げのきつさ)の原因にもなっているようです。

 第三は、言うまでもないことですが構造が特殊で複雑なことです。他社にはない構造を持っているため、それなりの知識を持った人間でないと整備なり修理なりができないということになります。いくら乗り心地がよくても修理ができないということでは困りますね。まあ、これが普及を妨げる最大の要因なのでしょうね。


ハイドロの誤解

いつも車体は水平?
 ハイドロ装着車では路面の傾斜にかかわらず、車体は常に水平を保つのだと信じられていることがあり、実際自動車雑誌等でもそう書いてあったりします。シトロエン各車は前述のとおり、たっぷりとサスペンションのストロークが確保されているので、そんなことができそう気がしますが、実際は前後それぞれで同じ車高を保っているだけで、車体が水平かどうかを測る仕掛けはありません。つまり、どういう状態でも同じ車高をキープし続けるだけなのです。水平なのは路面に対してであって、鉛直に対してではありません。
関連懸架?
 油圧回路を見ると、それぞれのサスペンションに配管が繋がっています。このこともあって、2CVやミニに見られる前後関連懸架のように、片方が押されるともう片方が伸びるという仕掛けになっているような気がします。実際そのように記載された本もあったりするのですが、前と後は全く別の回路となっていて、全く関連はありません。
 左右については確かに繋がってはいるのですが、ハイト・コレクタを介して細く長い配管で繋げられていることもあり、走行時の速い動きに対してその管を通じて左右が関連するほどLHMが流れるとは思えません。スフィアの圧縮に使われるのがほとんどだと思われます。また前述のとおり、セダンにしては異例に太いスタビライザが装着されています。太いということは強いアンチ・ロール効果を持たせるためですから、左右の関連をむしろ排除するための設計ではないかと思われます。仮に左右を関連させるにしても、ハイドロの構造では片方が縮むと反対を伸ばす方向に作用してしまうため、ロールが増えて好ましくありません。これらのことから、BXについては前後だけでなく左右も関連懸架ではないと言えましょう。
 なお、ハイドラクティヴでは配管が異なり、第三の玉(アディショナル・スフィア)に左右からかなり太いラインが繋がっているようなので、この玉がサスペンションと切り離されていない(=ソフトな)モードではある程度左右が関連しているような動作をするのではないかと考えます。ロールしない状態では3つ分の玉を使って大きなエア量を確保すると共に、ロール時には切り離サスを固くすることにより安定性を増しているのでしょう。

おまけの豆知識

 BXのリア・サスペンションの形式は前述のとおり、フル・トレーリング・アームとなっています。この形式の場合、ブレーキがかかるとその反力は車体を下げるように動作します。アンチ・スクォットの効果です。普通の金属バネで吊られている場合にはメリットだけで問題とはならないのですが、ハイドロの場合は問題が出てきます。運転中はいいのですが、駐車中に起こる問題です。
 いくらメイン・アキュームレータが付いているといっても、エンジンを切った後はクリアランス部分から次第に圧が抜けていって車高が下がってきます。フルトレだと、ジオメトリ上車高が落ちると後車軸が後に移動します(ホイールベースが伸びる方向です)。圧が抜けても後輪に駐車ブレーキがかかっていると、この変位が妨げられますので、バネが支えていた車重がサスペンション・ブッシュにまとめてかかってくることになります。ブッシュはサスペンションの位置決めをする役目はあっても、車重を支えるほどの負荷には耐えられません。
 そこで、BXでは前輪ブレーキのキャリパに工夫をして、前で駐車ブレーキが効くようになっています。前はストラット式ですからまっすぐ下に落ちても問題ないからです。車高が落ちきったときにはバンプ・ラバーに当たって、そこで車重を支えるようになっています。
 また、結果としてフリーになっている後輪ですが、後ろ向きに駐車する際に縁石に突き当たったまま駐めると、ブレーキがかかっているのと同様にサス軸に負荷がかかって傷めてしまいます。ハイドロ車をバックで駐める際には、ある程度後輪を縁石から離しておくように心がけてください。
 なお、Xantia中期以降はアンチ・シンキング・ヴァルヴなるものが装備され、エンジン停止後は電磁ヴァルヴで回路を閉鎖して一週間やそこらは車高が下がらなくなっているようです。ありがたいのはありがたいでしょうが、エンジンかけた後に「よっこらしょ」と腰を上げる仕草を見る機会が減ってしまって淋しいのではないかと思ってしまいます。


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